吉野弘「吉野弘詩集」ハルキ文庫

最近は忘れられてしまったようだ。
やさしい、という言葉の本当の意味が・・・。
吉野弘は、やさしさをうたう詩人である。
肌と肌が触れ合うような言葉の感触に
ゆったりひたって欲しい。

「夕焼け」(部分)
やさしい心の持ち主は
いつでもどこでも
われにもあらず受難者となる。
何故って
やさしい心の持ち主は
他人のつらさを自分のつらさのように
感じるから。
やさしい心に責められながら
娘はどこまでゆけるだろう。
下唇を噛んで
つらい気持ちで
美しい夕焼けも見ないで。