
最近は忘れられてしまったようだ。
やさしい、という言葉の本当の意味が・・・。
吉野弘は、やさしさをうたう詩人である。
肌と肌が触れ合うような言葉の感触に
ゆったりひたって欲しい。
「夕焼け」(部分)
やさしい心の持ち主は
いつでもどこでも
われにもあらず受難者となる。
何故って
やさしい心の持ち主は
他人のつらさを自分のつらさのように
感じるから。
やさしい心に責められながら
娘はどこまでゆけるだろう。
下唇を噛んで
つらい気持ちで
美しい夕焼けも見ないで。

最近は忘れられてしまったようだ。
やさしい、という言葉の本当の意味が・・・。
吉野弘は、やさしさをうたう詩人である。
肌と肌が触れ合うような言葉の感触に
ゆったりひたって欲しい。
「夕焼け」(部分)
やさしい心の持ち主は
いつでもどこでも
われにもあらず受難者となる。
何故って
やさしい心の持ち主は
他人のつらさを自分のつらさのように
感じるから。
やさしい心に責められながら
娘はどこまでゆけるだろう。
下唇を噛んで
つらい気持ちで
美しい夕焼けも見ないで。

何よりも言葉への思いにあふれている。
たかが言葉と言うなかれ、
詩の言葉のチカラを見よ。
「遠い国」
ぼくの苦しみは
単純なものだ
遠い国からきた動物を飼うように
べつに工夫がいるわけじゃない
ぼくの詩は
単純なものだ
遠い国から来た手紙を読むように
べつに涙がいるわけじゃない
ぼくの歓びや悲しみは
もっと単純なものだ
遠い国からきた人を殺すように
べつに言葉がいるわけじゃない

石垣りんさんは、1920年生まれ。
14歳から銀行で事務職をしながら詩を発表してきました。
石垣りんの詩は、生活に密着した小さき者の心をうたう。
女性と社会との関係から紡がれた言葉を聞いて欲しい。
では、ひとつ紹介しませう。
「シジミ」
夜中に目をさました。
ゆうべ買ったシジミたちが
台所のすみで
口をあけて生きていた。
「夜が明けたら
ドレモコレモ
ミンナクッテヤル」
鬼ババの笑いを
私は笑った。
それから先は
うっすら口をあけて
寝るよりほかに私の夜はなかった。