イタロ・カルヴィーノ「不在の騎士」河出文庫

イタロ・カルヴィーノは、キューバ生まれ、
現代のイタリアを代表する作家である。

「不在の騎士」は、「われわれの祖先三部作」の
ひとつであり、他に「まっぷたつの子爵」、
「木のぼり男爵」がある。

カルヴィーノは、第二次世界大戦中に
レジスタンスに参加していたため、本作にも寓意を
見いだす人がいるが、そんなことにはおかまいなしに
奇想天外な物語を楽しむのが一番である。

主人公の騎士は、真っ白な鎧に身を包み、
同僚の女性騎士からも恋心を抱かれるほどであるが、
その鎧の中身は空洞である・・・。

騎士たちは、出撃に備えて下半身の鎧のみ脱いだ状態で
待機している、などの蘊蓄(真偽は不明だが)もあり、
待機中の女性騎士の姿を思い浮かべながら、
にやにやするのも一興かもしれない。

湯本香樹実「夏の庭」新潮文庫

この本は、ぢいさんが死ぬ話である。
少年たちは、死に興味を持ち
早晩死ぬであろうぢいさんを監視する。
ところがどっこい、ぢいさんとは
しぶといものなのだ(笑)

少年たちは、ぢいさんとの短い夏を過ごし、
ぢいさんの死を看取り、
自分たちが想像の中で見ていた死と
正面から向き合うことになる。

少年たちは中学受験で離ればなれに
なってゆく。
あの世に知り合いがいることを
とっても心強く思いながら・・・。

筒井康隆「脱走と追跡のサンバ」角川文庫

筒井康隆ファン必読の書である。
なんて言うと怒られるかな(笑)
最近の筒井康隆はあんまり読んでいないけれども、
昔のスラップスティックな味わいが好きな人は、
まずこの本を読まなくちゃね。

パロディと言う分野が市民権を持って
どのくらいになるのか知らないけど、
筒井康隆こそ、その扉をこじ開けた
第一人者であることは間違いない。

さぁ、あなたも狂気の世界へ旅立とう!

フィリパ・ピアス「トムは真夜中の庭で」岩波少年文庫

トムは弟がはしかになり、
おぢさんの家にあずけられる。
そして深夜・・・大時計が13回鳴るとき、
トムは過去にタイムスリップしてしまうのだ。
そしてハティという女性と、彼女の人生を
一緒に過ごすことになる・・・。

ん? なんかありきたりのファンタジーを
想像していませんか?
でも、あなたの思いこみは見事に裏切られます。
この本を読み終わったとき、あなたはこの思いを
きっと誰かに伝えたくなるはずです。
クリスマスや誕生日のプレゼントが間近なら、
この小さな書物があなたの暖かい思いを
きっと伝えてくれることでしょう。

梨木香歩「西の魔女が死んだ」新潮文庫

この本は、ばあさんが死ぬ話である。
少女は多感な時期に祖母と暮らし、
共感できる部分を持ちながら、
様々な生理的な嫌悪感をぬぐい去れないまま
祖母の元を去ってしまう。

祖母の最後の魔法は、
実は少女がもっとも嫌悪した
男からもたらされた。
いや、そういう野暮な推測はやめた方がいい。
魔女は信義に篤いものなのだ。
孫との約束を破ったりはしないのさ。

梨木香歩さんには
他に「裏庭」という代表作がある。
是非そちらも読んでください。

リチャード・マシスン「ある日どこかで」創元推理文庫

リチャードがタイムスリップしてまで出会いたいと願う
女優エリーズ・マッケナ。
彼女には実在のモデルがある。
モード・アダムズ。
彼女は舞台女優なので、実際の演技を目にすることはできない。
J・M・バリの「小牧師」でスターになり、
「ピーターパン」を世界で初めて演じた女優。
今もピーターパンは女優が演じているが、
それはこのモード・アダムズから始まったのだ。

脳腫瘍で余命幾ばくもないリチャードの願いは叶えられるのか?
甘く切ないファンタジーをお楽しみください。
ちなみにこの作品は映画化されています。
作品が気に入ったら観るのもいいかもね。

桑原水菜「炎の蜃気楼」コバルト文庫

炎の蜃気楼は、1990年から
コバルト文庫で発刊された40巻に及ぶ
サイキック・アクション超大作です!
と、やけくそな紹介をしてしまいましたが、
戦国時代の武将たちが、怨将となって蘇り、
現代に戦国時代を再現しようとする(闇戦国)。
そして怨将に立ち向かうのは、
われらが上杉夜叉衆の面々なのだっ!
主人公は、
上杉謙信の養子三郎景虎が換生した、仰木高耶。
そして景虎に心身(!)を捧げる家臣(逆臣?)、直江信綱。
あぁ、なんか書いてて空しい・・・。

ま、暇とお小遣いのある方は、是非ご一読。
これでミラジェンヌの仲間入りよん♪

ピーター・S・ビーグル「最後のユニコーン」ハヤカワ文庫

道具立ては単純である。
最後のユニコーンは、仲間たちを探すため
ハガード王と「赤い牡牛」を求めて旅に出る・・・。

途中で出会った無能な魔術師は一世一代の大魔術で、
「赤い牡牛」に敗れそうなユニコーンを姫君に変身させてしまう。
やがてハガード王の王子、リーアに恋してしまう。
そして再び「赤い牡牛」との対決。
魔術師は姫君を、ユニコーンに戻してしまう。
敗走するユニコーンを救うのは・・・?
魔術師はリーア王子に言う
「そのために、英雄が、いるのです」

さてさてこの結末は?
わたしがこの本を読んだのは1979年!
まさに名作と呼ぶにふさわしいファンタジーです。