山中恒「ぼくがぼくであること」角川文庫

作者の山中恒は、戦前戦中の少国民教育の全課程を再発掘し、
それを「ボクラ少国民」4部作として記録に残した。
彼は昭和6年生まれ。
彼自身が典型的な軍国少年であった。
「ボクラ少国民」は、軍国教育の中で生きた自分自身との関連を
厳しく捉えており、作者自身の歴史の痛恨を見る思いがする。

「ぼくがぼくであること」は主人公の秀一少年が、
夏休みに家庭のごたごたが嫌になって家出して、
そこで出会ったひき逃げ事件や、薄幸の少女夏代との出会い
などを通して、自分をもう一度見つめ直す物語である。

小説だから、あり得ないことが次々と起こるのだが、
きみはきっと気が付くはず。
主人公の少年は架空の人間ではなく、
どこにでもいる
なんの変哲もない
きみ自信に他ならないのだから・・・。