
1945年8月6日に広島を襲った原子爆弾は
皮肉にもひとりの詩人の人生を長引かせることになる。
なんという矛盾だろう!
その前年、妻を結核で失った原民喜は、戦争の中、
自らの命の終焉を望んでいたと思われる。
そして被爆・・・。
焼け落ちた広島の市街地は死体で埋まり、
傷ついた人々のうめき声に充ち満ちた・・・。
原民喜は、この人間存在の凌辱とでもいうべき
凄惨な地獄絵図に直面し、
「このことを書きのこさねばならない」と
固く決意する。
そして6年・・・
使命を果たし終えた原民喜は、線路に静かに身を横たえ
帰らぬ人となった。