石垣りん「石垣りん詩集」ハルキ文庫

石垣りんさんは、1920年生まれ。
14歳から銀行で事務職をしながら詩を発表してきました。
石垣りんの詩は、生活に密着した小さき者の心をうたう。
女性と社会との関係から紡がれた言葉を聞いて欲しい。
では、ひとつ紹介しませう。

「シジミ」
夜中に目をさました。
ゆうべ買ったシジミたちが
台所のすみで
口をあけて生きていた。

「夜が明けたら
ドレモコレモ
ミンナクッテヤル」

鬼ババの笑いを
私は笑った。
それから先は
うっすら口をあけて
寝るよりほかに私の夜はなかった。