村田喜代子「蕨野行」文春文庫

お姑(ばば)よい。
永えあいだ凍っていた空がようやく溶けて、
日の光が射して参りたるよ。・・・

ヌイよい。
残り雪の馬が現れるなら、男ン衆の表仕事の
季節がきたるなり。・・・

このような独特な方言での義母と嫁の対話体で
語られる物語である。
姥捨ての習慣で、捨てられてワラビとなり
死に往くお姑と他のワラビたちの生きる様は
滑稽で猥雑で悲しくてせつない・・。
村田喜代子の作品は、その高い評価と裏腹に
ほとんど文庫で読むことはできない。
それがどれほどの損失なのか、
この物語を読んでとくと考えてみて欲しい。